1. EP.010

    そうだったのかブロックチェーン EP.010 | 「貨幣」とは何か?デジタルマネーの歴史、通貨・アセットの二面性から考える

    第8〜9回で扱った「トークンの換金」「上場する気のない株式≒トークン」を踏まえ、第10〜11回では真面目に『貨幣とは何か』を考える。今回はまずデジタルマネーの歴史を、銀行預金の電子化→Suicaなどの電子マネー→PayPal→M-Pesa(電話番号だけで送金)→ビットコイン→ステーブルコイン/CBDCと辿り、もともと決済の手段だったデジタルマネーがビットコイン以降『資産』性を帯びてきたこと、既存金融との接点が広がるほどKYCが不可避になる論点を整理する。後半は貨幣そのものへ。貨幣は「価値を運ぶツール」であり、体制が安定するほど貨幣自体に価値はない方が流通しやすい。社会契約論と株式会社の交差点にある管理通貨制度、無利子で通貨を発行できる国家、刷りすぎが招くハイパーインフレ、そして国家・企業・トークンを貫く『ウィル(意思)』の重要性を論じる。最後は「ビットコインになぜ金利がないのか」を切り口に、"すべての貨幣はアセットになれるが、すべてのアセットは貨幣になれるとは限らない"という視点へ。次回は、貨幣の通貨的側面とアセット的側面をどう使い分けるかに進む。

  2. EP.009

    そうだったのかブロックチェーン EP.009 | 有価証券から考えるトークンの換金可能性、非上場株式との類似点

    第8〜9回で扱う「トークンの換金」を受け、今回は前回の一物一価・無裁定に『時間』の軸を加える。日本円では今日の1円と明日の1円が金利でつながっており、債券(将来100円を今日95円で買う割引の発想、複利で雪だるま式に増える)や株式がその時間の概念を表現している。株式は債券と違い満期がなく、価値の源泉は利益の分配(配当)と残余財産の分配、そして議決権=オーナーシップ。だが日本の株式会社およそ300万社のうち上場はわずか0.1%で、99%は「上場する気のない」非上場企業——その株式は無裁定・一物一価の世界と無縁で、社長や遠い親戚、取引先が『つながり・絆・運命共同体・応援』として保有する。値段はつかないが1枚2枚とは数えられ、会社ごとに解釈のルールも違う。この非上場株式こそトークンに酷似しているのではないか、という発見にたどり着く回。次回は「そもそも日本円=貨幣とは何か」を掘り下げ、その先で暗号資産そのものへと向かう。

  3. EP.008

    そうだったのかブロックチェーン EP.008 トークンは「お金」に換えられるのか?一物一価と無裁定から考えるトークンの価値

    第8回からは「貨幣とトークン」を4回かけて掘り下げるシリーズの幕開け。 狙いは、トークンの譲渡によって経済活動をインセンティバイズできる、という現象をきちんと説明すること。 まず本シリーズのトークンの定義を3要件に更新する ①譲渡可能であること、 ②ナラティブを背負うがゆえにフィアットとの無裁定での換金は簡単でないこと、 ③フィアットには替えられない『何か』が経済活動への貢献インセンティブを生むこと。 賭博のチップとの線引きを定義に組み込む狙いだ。 続いて、有価証券を電子化したセキュリティトークン/トークン化ファイナンスは我々の言うトークンとは別物だと切り分けたうえで、経済学で最も典型的な引っ掛け——『一物一価』と『無裁定』——に踏み込む。 1枚は1枚という一物一価が成り立っていても、市場が分断していれば裁定機会(フリーランチ)は生じうる。晴れ/雨で支払いが決まる証券A・Bの数値例で「一物一価でも無裁定とは限らない」ことを白板なしで示す。 だからトークンは、内部では1枚2枚と矛盾なく数えられる(ファンジブルでNFTではない)が、フィアットとは無裁定にならない—— 「トークン128円」とプライスタグは付けない。内田トークン・酒井トークン・大津賀トークンそれぞれに固有の『ワールド』があり、ワールド間の交換レートは今は棚上げ。 価値と価格の違い(合意された交換レートが価格)を整理し、次回の『金利』へと橋を架ける回。

  4. EP.007

    そうだったのかブロックチェーン EP.007 | トークンはどのチェーンに載せるべきか? L2、サイドチェーン、主要L1の特徴と選び方

    前回のビットコインとイーサリアムを受けて、第7回はその「上」と「隣」と「外」にある無数のチェーンを地図化する回。まずレイヤー1(L1)の混雑とガス代高騰から生まれたレイヤー2(L2)とサイドチェーンの違いを、居酒屋の割り勘——個別精算がL1、代表が一括して払うのがL2——という例えで解きほぐす。L2はセキュリティをL1に預ける2階建て、サイドチェーンはブリッジで結果だけ渡す『隣に建てた家』。日本のNFTブームを支えたポリゴンが実はL2ではなくサイドチェーンであることや、楽観的に検証を省くオプティミスティックロールアップの危うさ、ゼロ知識証明を使うZKロールアップにも踏み込む。さらにイーサリアムがPoS化してガス代が下がった今、L2の存在意義は「速さ」ではなく「L1にできないこと(プライバシー等)を補うアドオン」にしかない、という視点を提示。後半はアバランチ(独自チェーンを建てられる)とソラナ(Rust・データとコード分離で並列処理)の差別化、ハイパーレジャーやコルダといったエンタープライズ系は『コンポーザビリティがないならクラウド共有DBでいい』という整理、ユニチェーンなどアプリ発のチェーンの栄枯盛衰までを一気通貫。最後は「トークンを信頼するにはチェーンも信頼が要る」——L2を使えばトラストが3段階に多層化することを踏まえ、安さと速さだけでチェーンを選ぶなという実務的な着眼点で締める。

  5. EP.006

    そうだったのかブロックチェーン EP.006 ビットコイン(BTC)とイーサリアム(ETH)の「役割と価値」のあり方とは?

    前回までの抽象的なトークン論・トラスト論を受けて、ここからは視聴者にも馴染みのある具体のチェーン論へ。第6回のテーマはビットコインとイーサリアム。まず「ブロックチェーンを使ってビットコインを作った」のではなく「ビットコインを作るためにブロックチェーンという技術スタックが生まれた」という出発点の整理から始まる。ビットコインのコアはUTXO——口座残高を管理せず『使える権利の単語カード』を積み上げるステートレス設計で、2009年以来一度も停止もロールバックもしていない堅牢さこそが時価総額最大の理由だと内田は説く。一方で「決済専用なのに決済に使われていない」「保有者が増えない」「半減期とプルーフオブワークの電力代が実体経済の成長とズレ始めている」「AIデータセンターとの電力の奪い合い」など、貨幣としてのBTCの将来には論点が山積みであることも整理する。後半はイーサリアムへ。ETHは価値の保存手段ではなく『スマートコントラクトの利用料(ガス代)を払うためのネイティブトークン』であり、BTCとは見ているレイヤーがそもそも違う——プルーフオブワークからプルーフオブステイクへの移行で何を得て何を捨てたか、デジタルゴールド論の落とし穴まで踏み込み、「ビットコインとそれ以外」という業界地図を描き直す回。

  6. EP.005

    そうだったのかブロックチェーン EP.005 【良いチェーン・悪いチェーン】トラスト(信頼)とオラクル問題

    「良いチェーン悪いチェーン」第2弾。今回のテーマは「トラスト」。前回までで触れた『プロトコル』『分散』『コンポーザビリティ』に続き、ブロックチェーン業界で最もふわっと使われがちな単語「トラスト」を解きほぐす回。ブロックチェーンの肝は『改ざん不能性』ではなく『相互検証可能性』であること——取引が公開されている代わりに、誰も中央権力で過去を書き換えられないという仕組みが、参加者の合理性によって維持されている、という整理から始まる。続いてネイティブトークンと独自トークン(ERC-20の自作トークン等)を分け、独自トークンのトラストはチェーンのトラストに二重に依存することを指摘。さらにオラクル問題——オフチェーンの世界とオンチェーンをつなぐ装置の信頼性——を正面から扱い、ビットコインがステートレス設計でオラクル問題を回避している唯一のチェーンであること、独自トークン中心の世界では『オラクル問題に対する合意』が事実上のトラストの土台になることを論じる。後半はイーサがフィアットと交換可能になった瞬間に「トークン的でなくなる」というパラドックスから、トークン経済が法定通貨経済への反逆として何を残せるのかを議論。

  7. EP.004

    そうだったのかブロックチェーン EP.004 拡張性とスケーラビリティ

    第1〜3回で扱った「トークンとは何か」「マネーとトークン」「生産性とコミュニティ」を踏まえ、今回からは具体のチェーン論に踏み込む。「良いチェーン悪いチェーン」第1弾として、P2P / コンセンサス / ハッシュという土台から、バーチャルマシン、スマートコントラクト、トークン、コミュニティへと積み上がるブロックチェーンのレイヤー構造を整理。「プロトコル」「SDK」「ライブラリ」が混同されがちな業界の言葉を解きほぐし、拡張性と柔軟性を分けて考えること、開発エコシステムの厚みが事業者にとってのチェーン選択ではプロトコル性能以上に効くことを論じる。後半は通称『ブロックチェーン・トリレンマ』(スケーラビリティ × 分散性 × セキュリティ) に対する酒井からの反論——「分散性はアビリティではなくディレクション(設計思想)であり、そもそも他の2つと並列に置けない」——を起点に、パブリック / プライベートの境界やノード・開発者・運営責任など「何を分散させるか」を議論する。

  8. EP.003

    そうだったのかブロックチェーン EP.003 コミュニティにおけるトークンの生産性とは

    第1〜2回で扱った「トークンとは何か」「市場と流動性、マネーとトークン」を踏まえ、酒井がかつて運営していたグルメアプリ『SARAH』と独自ブロックチェーン『ONIGIRIチェーン』を題材に、フィアットマネーでは測れないローカルな価値をどうトークンで循環させるかを実例で語る。UMEトークンによる感謝の譲渡、口コミデータを 50〜100 年残す未来志向、GDP では測れない「質的な生産性」と「コミュニティの充実」——量的拡大とは別軸の「成長」をデザインする視点を提示し、第4回の技術論への橋渡しとする。

  9. EP.002

    そうだったのかブロックチェーン EP.002 市場と流動性、マネーとトークン

    「そうだったのかブロックチェーン」の本編第2回。前回の『トークンとは何か』を受けて、今回はトークンが『市場』と出会うと何が起きるのかを掘り下げます。30人の教室から500人の教室へ——第三者の観測によって、相対取引の主観的な価格が集団の客観的な合意に転化する瞬間、そこに流動性が生まれるメカニズムを解説。さらに明日・明後日という時間軸が加わると市場はどう厚みを増すのか、マネーとトークンは『あげる・もらう』という動詞でどう使い分けられるのか、譲渡可能性という補助線から整理します。次回はトークンとコミュニティの関係へ。

  10. EP.001

    そうだったのかブロックチェーン EP.001 トークンとは?

    「そうだったのかブロックチェーン」の本編第1回。テーマは『トークンとは何か』。ウォレットに入るデータとしてのトークンを、『持つ』『あげる』『もらう』という基本動作から丁寧に解きほぐし、なぜそこに価値が生じるのか、誰がその価値を維持するのかまで掘り下げます。小学校の勲章を例に、発行・流通・設計・インセンティブ・トークノミクスまで、ブロックチェーンを語る上で最初に押さえておきたい基礎を整理。次回はトークンの価値に周囲がどう影響するかへ展開予定。

  11. EP.000

    そうだったのかブロックチェーン EP.000 自己紹介

    番組の第0回。日本銀行で30年金融規制とリスク管理の実務に携わった内田善彦(周南公立大学情報科学部教授)と、グルメアプリ SARAH を学生時代に創業し独自ブロックチェーン「ONIGIRI Chain」を構築した酒井勇也のホスト自己紹介回。二人がブロックチェーンと出会ったそれぞれの経緯と、番組で扱っていくテーマの方向性について語ります。次回は「トークンとインセンティブ」をテーマに本編がスタート